ウィルスは生きている
書名:ウィルスは生きている
著者:中屋敷 均
訳者:田沢恭子
冬場になると、「アルコール消毒でウィルスを殺してください」
なんてことを聞く度に、「ウィルスは生物じゃないし~」
みたいに思ってイラっときている理系人間だったので、
タイトルにひかれて手に取ってみました。
機能としてウィルス様の物質(?)は細胞内に多々あり、
その境界はあいまいであることは、なんとなく予想していたことだったが、
ウィルスが進化の一翼をになっていることなどは知らず新鮮に感じた。
ウィルスと進化を考える上で、バザールという比喩が面白いと感じた。
「生物ゲノムは、他者のリソースを有効に利用できるオープン型のアーキテクチャー」で、「突然変異と自然選択による地道な遺伝子改変に比べ、ウィルスは、すでに何らかの機能を持つ「商品」を持ち込むので、大きなインパクトを持っている。」
翻って、イノベーションを行うためには、要素のトライアルではなく、モジュール(商品)のトライアルを行う方が、効率的なのかもしれない、と感じた。
「ダーウィン進化する能力を持つ、自続的な化学システム」
と、そのためのロジック(進化のロジック)としての
・自己のコピーを作る仕組みを持つこと
・コピーにバリエーション(変異)を生み出す性質を持つこと
という、筆者が採用する生命の定義を踏まえた上で、
ウィルスは生きているか考えることとしよう。
バイオテクノロジーの世界は、
旧来の常識が新しい知見でどんどん更新されている学問領域であることが
よくわりかりました。
個人的な評価:★★★☆☆(6.0)