スマホ脳

書名:スマホ

著者:アンデシュ・ハンセン

訳者:久山葉子

 

最初のスマホiphone 3GSだった。あれから10年以上使い続けていることになる。手に取った当時は、自由度の高さ、新しい体験に感動したが、今ではすっかりスマホに囚われている。スマホの依存性はヘロイン並みという言葉が目に入り、新刊のこの本を手に取ってみることにした。

 

■新しく知った知識/視点(書籍本文の引用/一部編集)

・睡眠、運動、そして他者との関わりが、精神的な不調から身を守る3つの重要な要素

・人類の進化の歴史の大半は脅威からいかに身を守るかが重要な世界で、その世界にかかる選択圧は、「周囲の危険を敏感に察知し、闘争/逃走の準備する」という能力に秀でるものが優位になる世界だった。周囲の環境を理解するほど、生き延びられる可能性が高まる。

・大昔、感染症などのリスクがあった時代には、脅威に囲まれている(強いストレスがある)ときに、そこから逃げる行動ベースの免疫が培われた。これがうつと関係するのでは?

 ・脳は新しい情報を欲する。スマホのページをめくる度にドーパミン(報酬物質)が放出される。実は、今読んでいるページよりも「次のページ」に夢中になっている。報酬システムを作動させるのは、何かが起こるかもという期待/不確かな未来への期待。ドーパミンの最重要課題は人間に行動する動機を与えること。「

フェイスブックやインスタグラムはいいねがつくのを保留することがある。そうやって、私たちの報酬系が最高潮に煽られる瞬間を待つ。刺激を少しずつ分散することで、デジタルなご褒美への期待値を最大限にできる。

・複数の作業の間で集中を移動させることで、気持ちがよくなる。あらゆる刺激に迅速に対応できるよう、警戒態勢を整えておく必要があったから

・情報の固定化には、情報をその人の個人的体験と融合させる必要がある。本当の意味で何かを深く学ぶためには、集中と熟考の両方が求められる。ウェブページを移動している人は、脳に情報を消化するための時間を与えていない。

スマホほど巧妙に作られたものが他にあるだろうか。ちょっとした「ドーパミン注射」を1日に300回も与えてくれるなんて。だからスマホのことを忘れられない。一緒に夕食を食べる仲間がつまらなく思えるほど。

ヒエラルキーにおける地位が精神状態に影響するなら、この接続された新しい世界ーあらゆる次元で常にお互いを比べあっている世界が、私たちの精神に影響を及ぼすのはおかしなことではない。

・生死にかかわる情報だから、私たちは脅威や紛争のニュースに各段に興味をもつようになった。

・脳は体を動かすためにできている。そこを理解しなければ、多くの失敗を重ねることになるだろう。

・身体の状態がいい人はストレスシステムを事前に作動させる必要がない。脅威かもしれない対象を攻撃したり、逃げ出したりする体力があるからだ。それが不安の軽減につながる。

・週に2時間の運動が知能に良い影響を与える

 

■感想

人間本来の性質と、スマホがもたらす環境とのミスマッチが、スマホ依存を生み出している。暇があったらスマホを弄る自分は、新しい情報への期待に突き動かされているだけということを、客観的に捉えることができた。自分の意志でスマホを見ているのではなく、欲求により突き動かされているという方が正しいのかもしれない。

スマホ依存から脱する方法は、手の届かない場所におく、電源を切る、使う時間に制約をかける、ということなのだろう。電源を切ると、立ち上げの時間で冷静になる時間ができるので良いスマホ依存対策になるだろう。本文にもあったように、集中力をそがれないようにする効果も期待できそうだ。

最近読んだ「サブカルスーパースター鬱伝」でも「運動しない文科系は鬱になる」というフレーズがキーワードになっていた。日常に運動を取り入れるようにしようと思う。

技術者として、「人間がテクノロジーに順応するのではなく、テクノロジーが私たちに順応すべき。もっと人間に寄り添ってくれるような製品を」 という言葉は心に留めておきたい。

 

個人的な評価:★★★★☆(4)