バッテリーウォーズ 次世代電池開発競争の最前線
書名:バッテリーウォーズ 次世代電池開発競争の最前線
著者:スティーヴ・レヴィン
訳者:田沢恭子
個人的に電池の技術開発状況に興味があり読みました。
特に、第一部のアルゴンヌ国立研究所を中心としたNMC材料開発に関わる話が面白いと感じました。
電池事業のないアメリカにおいて、研究開発の成果を収益化する手段としての特許果たす役割の重要性が良く理解できた。
特に、2社のみにライセンスし欠乏状態を作る戦略や、国際特許が無いにも関わらずライセンスに打って出る戦略が興味深かった。(後者は、米国市場でEV事業を行うGMに電池を供給している韓国LGへのライセンスに繋がった。)
第二部、第三部では、研究者が対象にしている技術の実市場での価値を評価するための仕組み(batpacのことか?)の話が印象に残った。
技術ができても市場で価値が無いということは良くある話で、研究開発初期において技術価値を正当に評価することの重要性を認識させてくれました。
ただ、第二部、第三部については、国家プロジェクトに採択されるための苦労は理解できたが、それがどういう成果を生み出したか?については語られなかったし、ベンチャーの躍動感を感じることはできたものの、最終的には結局はペテン扱いになっており、消化不良感が残った。やっぱり、成功譚の方が読後感が良い。
個人的な評価:★★☆☆☆(4.0)
日本のいちばん長い日
「日本のいちばん長い日(2015)」を観ました。
史実の再現を3時間弱の映画で行うのは難しいと思います。陸軍将校を決起に至らせる時代の空気は、理解するに至りませんでしたが、役所広司さん演じる阿南陸軍大臣の懊悩は、響きました。
昔、「失敗の本質ー日本軍の組織論的研究 野中郁次郎ら著」を読んだことがあり、座右の書籍の一つです。その中に、撤収戦略を考える必要があるとの記載があったと記憶しています。
撤収戦略を欠いて始まった太平洋戦争の終盤に鈴木内閣が担った大仕事を描いた良作だと思います。
やめることの難しさ。仕事でもよく感じます。なぜ、やめることが難しいんでしょうか?やること(の大義)が無くなることが怖いから?その怖さをどう克服する?自分自身、答えが見つかっていません。
個人的な評価:★★★☆☆(3.0)
ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日
「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日(2012)」を観ました。
インドの方が主人公ということに引っ張られたのか、「スラムドッグ$ミリオネア(2008)」のことを思い浮かべました。どちらも奇妙な人生譚、どんどん引き込まれます。
中盤以降は、一人芝居の設定になるのですが、トラとの緊張感や、夢想的な挿話など、全く飽きさせません。
3D映画だったのですが、DVDでの2D鑑賞だったので、監督が狙った視覚効果をフルで体験できていないのですが、夜の海上の幻想的な描写は非常に美しかったです。
物語最後の保険調査員への調書のくだりで、「あれ、ほんとの話はどっちなんだろう」とぐらっと揺さぶられる感じもたまりませんでした。
個人的な評価:★★★★☆(4.0)
シン・ゴジラ
「シン・ゴジラ(2016)」を観てきました。
鑑賞中は、BGM、テロップ、設定が細かい世界観など、まんま「「新世紀エヴァンゲリオン(1995)」やんという思いが拭えませんでした。第○シトが今回のゴジラだったとしても違和感がなかったかもしれません。
とはいえ、鑑賞後、よくよく考えると深い映画だったなぁという思いが日に日に増しています。
これまでのゴジラシリーズの中では、初代「ゴジラ(1954)」が白眉だったと思います。人間と対峙する不条理な脅威という位置づけの方が、vs○○的な位置づけよりも、深みが出るのかもしれません。
※スーパーXとかいう安易な名前の兵器で立ち向かう「ゴジラ(1984)」は除く
初代「ゴジラ」では、太平洋戦争での空襲の恐怖を想起させる存在でしたが今回の「シン・ゴジラ」では、東日本大震災での津波や原子力事故の恐怖を想起させるものとして成功していると思います。ゴジラが通過した町(≒津波)、対ゴジラ作戦(≒原発事故対策)は、あの震災に(私の場合、テレビを通して)感じた恐怖を想起させるものでした。
約5年前の震災を共有している我々にとっての「シン・ゴジラ」は、戦中世代の方々にとっての初代「ゴジラ」と同じなのかもしれません。
映像のリアリティもUS版「GODGILLA ゴジラ(2014)」以上でしたし、ゴジラファンにとっても、BGM(個人的には、「三大怪獣 地球最大の決戦(1964)」のもの)や初代「ゴジラ」を思い出させる電車とゴジラの絡みなど、くすぐられるポイントがたくさんでした。
個人的な評価:★★★★☆(4.0)
ボギー!俺も男だ
さて、ブログタイトルのアラン・フェリックスとは誰か?
私の大好きなウディ・アレン脚本・主演の作品「ボギー!俺も男だ(1972)」の主人公の名前から拝借しました。
主人公の元妻が主人公に向かって言う「あなたはwatcherだけど、私はdoer、私は参加したい」というセリフが心に残っています。はじめは傍観者に過ぎなかった主人公が、しだいに主体的になっていく姿に勇気づけられました。
・現状から脱却したい
・なかなか行動に移れない
そういう悩みを抱える人の背中を押してくれる作品です。
とはいえ、映画自体は初期ウディ・アレン流のおかしさ爆発の脚本で、お気に入りは、
・主人公の友人が紹介してくれた女性が家にやってくるシーン
・美術館で女性に声をかけるけれども、あえなく撃沈するシーン
などなど
後の「カイロ紫のバラ(1985)」に通じる映画愛も感じます。