1993年の女子プロレス

書名:1993年の女子プロレス

著者:柳澤健

 

柳澤健氏の著作は、アントニオ猪木UWF、棚橋と中邑の3冊を読了済みで、いずれも夢中になって読んでいた。『1993年の女子プロレス』はAmazon Prime Readingで見つけたため、女子プロレスラスタとんねるず?の豊田真奈美や、1990年代末のキッスの世界しか知らないにも関わらず、読んでみた。

 

■新しく知った知識/視点 (書籍本文の引用/一部編集)

 

 ・北斗晶井上京子は、相手を使って自分を表現する力がズバ抜けてる

・レスラーはお客さんのニーズに合わせつつも、その上を行かなければならない

・表面に出ている緊張関係と、内部の緊張関係が一致してるところが、全女という団体の恐ろしいところ

・「人の見えないところで練習しろ、人に見えるところで練習してても強くなれない」

・みんなが揉めてたり、うまくいってないと感じたときは、小鉄さんは選手全員をリング上に集めて「輪になって隣の人と手をつなげ」って言うんです。「隣の人の手を握れ。その感触を覚えておけ。これがおまえたちの仲間なんだから、みんな思いやりを持たないとダメだぞ」って。

北斗晶長与千種、二人に共通してるのは、つねに考えていること。「どうしたらマスコミに話題を提供できるか」と頭を使っていました。

・最終的に必要な要素は人間味じゃないですか。人間力。北斗やブル、千種にしても人間的な魅力があったからこそ成功したんですよ

・「ワンセット 50 回の腕立てや腹筋は、人より絶対1回多くやれ」「人が 50 回やってるところを 51 回やれば、それだけで1年で365回多くなる」って。そうすれば人より鍛えられるんだっていうことです

・プロレスの究極の目的は、観客の心を動かして次の試合にも足を運んでもらうことにあります。アクロバットを演じることではなく、観客の心理を直接動かす。

・北斗選手のほうがフリーでやっていたぶん、ギラギラしてるっていうか、1回でもポシャッたら使ってもらえなくなるという危機感がある感じがした。1試合1試合に懸ける思いというか、自分を表現するっていう、飢えた部分やハングリー精神が凄くありました

・LLの根本は山本小鉄さんの教えである「プロレスはお互いあってのもの」「思いやりが大切だ」ってところから始まってる

 

■感想

日本女子プロレスは団体内の人間関係がそのまま試合に表現されていたり、ガチンコ(押さえ込み)が取り入れられていたということは、全く知らなかった。プロレスにおける特異点かもしれない。最狂という表現も的をを得ている。

長与千種北斗晶が天才であること、アジャコングが男子プロレスファンを女子プロレスに引き込んだこと、女子プロレスが男子プロレスファン向きになったことで、逆に女子プロレス志望の若手が少なくなったこと。全日本女子プロレス末期の歴史感/構造が良く理解できた。当時の歴史を追ってみたいと感じた。

あと、山本小鉄のエピソードが素晴らしい。

インタビュー形式ということもあり、柳澤健氏の他の著作と比べ、冗長であるように感じる。最終章「北斗晶と対抗戦の時代」が本書籍のエッセンスであると思う。北斗晶のインタビューが収録されていない点が最も残念。

 

個人的な評価:★★★☆☆(3.0)